軽井沢のヘルメット

角田安正・雑記帳

2023年4月から道路交通法が改正される。

自転車利用時のヘルメット着用は、現行法では13歳未満の子供が乗る場合、保護者もかぶる努力義務がある。改正法では自転車に乗る人全員が着用する努力義務が加わる。罰則はないが義務が広がる。

昔からヘルメット着用はなかなか徹底しない。原付バイクやスクーターなどヘルメット着用のために需要が遠のいた例も多い。

(1950年代半ばの集団サイクリング風景)

戦後間もない1950年代半ばに第一次サイクリングブームがあった。集団のなかでは誰一人としてヘルメットをかぶっていない。かぶるという考えさえ乏しかった。

外装3段スポーツ車は25~6千円、大卒初任給は13.000円、若者は1日400円で日借りした。ヘルメットまでは手が回らない。

しかも、戦後に始まった競輪のギャンブルメージは悪く、選手たちのヘルメットのデザインもダサい。これではサイクリングではかぶる気がしない。

(当時の競輪選手のヘルメット、番号布で覆っていた)
(当時の主な一般向け自転車用ヘルメット)

やがて通学時の自転車通学が増加した。当時は通学規制がうるさく、学校の指定は絶対だった。

それを見てブリヂストンでは、乗馬用ヘルメットを改造してサイクル用として市販した。

(乗馬用を改良したサイクルヘルメット、価格19.500円)

1973年のある夏、軽井沢を訪れたとき、この新型ヘルメットをかぶった女子中学生の一団が颯爽と走ってきた。

「このヘルメット暑いわね」

見れば汗もかいている。軽井沢で暑いなら他所ではもっと暑いだろう。安全性とデザインを重視しすぎたな。直ちに販売を中止した。

━自転車とヘルメット、この関わりは難物である。

一般に自転車利用時の交通事故では、死亡者の6割が頭部に致命傷を負い、未着用者の致死率は着用者の2.2倍に上るという。やはりヘルメットは大切だ。

「隗(かい)より始めよ」という諺がある。警視庁では改正道交法施行に合わせ、制服の警察官が取締りに向かう際に着用するヘルメットを制定した。

(取締り時に着用する警視庁のヘルメット)

全体のデザインは流線型になり、正面には警察のエンブレム、両側面の「警視庁」

後部には「POLICE」と表示されている。

なかなか普及しないヘルメット。交通規制に頼るだけでなく自転車愛用者の良識に期待したいもの……。

4週間前