人と夢を自転車に乗せて
ブリヂストンサイクルの50年

(ブリヂストンサイクル 1999年刊)

今回紹介する自転車本は、ブリヂストンサイクルの創立50周年記念史である。

本書が刊行された1999年(平成11)は、“黄金の80年代”と呼ばれた日本自転車産業の繁栄期が終わりを告げ、やがて来る2000年代前半の壊滅期にいたる10年ほどの狭間に咲いた最後の栄光の時代を背景としている。

  本書は、自動車や航空機用タイヤを生産していた日本タイヤ(現ブリヂストン)旭工場(佐賀)建設から始まっている。

戦後軍需から平和産業への転換を迫られ、自転車事業に進出した大企業は三菱重工を筆頭に数多い。同様に日本タイヤも平和産業に進出した。

もともと旭工場は、航空機用車輪専門工場であり金属製品のノウハウがあった。自転車はフレームを始め大半の部品が金属でできていて、唯一のゴム製品である自転車タイヤは本来お手の物。自転車事業への進出は必然性があった。

加えて1950年代にオートバイ事業に進出、これが自転車事業の足かせとなったという。ようやく完成車メーカー国内首位に立ったのは1960年代半ばのことであり、すでに平和産業への転換メーカーは姿を消していた。

さらに1973年には歴史に残る175万台生産を記録、世界5位のミリオンメーカーになり、それ以降20世紀末までの自転車産業をリードしてきた歴史が詳しく記述されている。

なかでも商品を始めとするマーケティングの変遷史は、系統だった資料に乏しい今日では貴重な記録となっている。

  本書はテーマ編と資料編に分けられ、1テーマごとの読み切り形式で構成されている。あとがきには「気軽に目を通していただけるような社史」を編集方針としたと書かれているが、「人と夢を自転車に乗せて」という題名通りの楽しい読み物にもなっている。

本書を通して社史にありがちな誇張や宣伝はあまりない。実際に使用された写真やイラストが「見る社史」の役割を果たすと同時に事実の裏づけになっている。

2000年代に入ってからの完成車メーカーの本格的な社史や記念史は、2012年発刊のパナソニックサイクルテック社史以外は見当たらず、その意味でも本書は歴史的な記録である。

全編を通して自転車史を探求する第一級史料として高く評価できよう。

人と夢を自転車に乗せて

ブリヂストンサイクルの50年

5か月前