テレビに見る最新自転車事情

たまたま病を得て、4週間もの長い間入院する破目になった。

毎日することがほとんどない。毎日3回の食事と合間を縫っての治療が済むと、ベッドの上からテレビを見るか、疲労を避けながら読書をするか、選択肢は限られる。

  まるでテレビを見るために入院しているようだ。

だが、気が付いたことがある。自転車がテレビに現れる頻度が過去にないほど多いことだ。おそらく1980年代のMTB(マウンテンバイク)ブーム以来であろうか。

そのなかから、自転車の新しい用途に関わるニュースを紹介する。

  21年10月7日夜首都圏で震度5強の地震が発生。その影響で首都圏の鉄道の運転見合わせが続出、再開の見通しがたたないなか、多くの帰宅困難者がタクシー待ちの長蛇の列をしり目に、駅周辺にあるシェア自転車を利用して帰宅したという。

(東京都に点在するシェア自転車拠点マップ)

その夜はターミナル周辺のシェア自転車在庫はゼロとなり、翌朝も平日の1.5倍の利用があったという。鉄道の代替手段として使われたことは明らかである。

テレビのインタビューでも「ステーションがあちこちにあって気軽に使えた。これからも帰宅難民になったらシェア自転車で帰る」と答えていた……。

切っ掛けはともあれ、人々がシェア自転車に馴染むにつれ、ラストワンマイルの有効な手段として認知されていくだろう。

もともと自転車は震災や災害に便利な乗物である  

阪神・淡路大震災の時には、応援や見舞客が折りたたみ自転車を列車に乗せて集まったため、関東関西の自転車店の店頭から折りたたみ車が姿を消したという。

また東北大震災では、東北各県の自転車店が空っぽになった話はよく知られている。

  しばしばテレビに画像が流れるのは、いまや都会の風物詩となったフードデリバリーの自転車である。

「ウーバーイーツ」や「出前館」のギグワーカーの若者たちが、背中に担ぐ大きな“リュック”、受注用の“スマホ”とともに商売の3種の神器というべき“自転車”を巧みに操り、渋滞のなかを素早く走り抜ける姿を見かけた人も多いだろう。

(商売道具はリュック・スマホ・自転車の3種)

米国生まれのウーバーの日本上陸は2016年、わずか4~5年で登録飲食店13万店、これだけで家族を養う配達員もいるほどの急成長ぶりである。

料理宅配は日本でも古くあった。蕎麦・寿司・うなぎなどが、自転車を使って配送していた。

(自転車で蕎麦を高く積んで運ぶ若い衆)

「昭和の初め、蕎麦を運ぶ若い衆がハンチング帽子にニッカボッカ、派手な上着を羽織って短いハンドルの自転車で曲乗りしながら運ぶ。とにかくかっこよかった……」と大の自転車好きの作家永六輔は著書の中で述べている。

昭和になると、もはや自転車そのものは珍しくはなかった。十数段もの高さに積んだ曲乗りスタイルのかっこよさがうけたのである。同様な新しいイメージをウーバースタイルに見る人も多いだろう。

  SDGs(エス・ディ・ジーズ)が重んじられる時勢柄、そのシンボル的存在の自転車が、100年の歴史を超えて再び脚光を浴びている。いま自転車には新しい道が開けている……。

10か月前