自転車に乗って見る日中経済
━コロナを超えて

(駒形哲哉 霞山アカデミー新書 2021年刊)

本書は、中国自転車産業研究の第一人者である慶応義塾大学経済学部駒形哲哉教授が、中国の改革開放・市場経済化とそれに連動して起こった日本の産業空洞化の歴史的変遷を踏まえながら、最新の日中自転車事情を紹介した新刊の自転車産業研究書である。

中国経済の発展と日本産業の空洞化は、自転車だけではなく繊維から始まり電気製品などの耐久消費財、近年では半導体にいたるまで、広く日本経済全体に起こっている現象である。

なかでも自転車は、完成車と部品工業から成り立つ、いわば“ミニ自動車産業”でありながら、わずか20年ほどの間に完全と言っていいほどに産業の海外移転と空洞化が成立した歴史を有している。

筆者はこのあたりの考察を“自転車に乗って見る”と表現して、第1章を通してシンプルにわかりやすく記述している。

第2章で電動自転車(いわゆるフル電動車)と電動アシスト自転車、第3章ではシェア自転車の実態と変化を語っている。

  何故中国では規制があるはずの電動車が、自転車需要の大半を占めるほどに伸長したのか?

  何故中国では大量のシェア自転車が普及したのか?

これらの疑問を解明する記述は、日中の産業経済や国民性の違いを浮き彫りにして、きわめて興味深く面白い。

末尾に、わずかながらコロナ禍がシェア自転車に及ぼす影響についても言及している。

確かにコロナにより、個人の交通手段である自転車は世界的に販売台数が伸びている。同時にシェア自転車も、公共的な都市交通補助手段として利用が増加している。

アフターコロナの日中自転車産業はどのように変化するか、興味は尽きず著者の研究を待ちたいものである。

  著者には本欄でも紹介した研究書「中国の自転車産業  改革・開放と産業発展」、や「東アジア自転車産業論  日中台における産業発展と分業の再編」(共著)などの労作がある。1990~2010年代の日中自転車産業の変化史を知りたい人にとっては得難い自転車本である。一読を奨めたい。

3週間前