サイクルパワー
━自転車がもたらす快適な都市と生活━

(横島庄治 ぎょうせい 2001年刊)

本書は、都市生活における自転車利用の啓蒙書として、21世紀のあり方を語っている。内容はエッセイ集に近い趣きがあり、わかりやすく読みやすい。

著者はNHK社会部出身、当時は高崎経済大学教授であり、専門の都市経営の見地から自転車活用を説いた自転車本である。

  本書が発刊された2001年は、1990年代のバブル崩壊と円高デフレ、中国台湾超廉価車大量流入により、“黄金の80年代”と謳われた自転車産業が壊滅。まさに自転車は受難の真っ只中にあった。

駅前には大量の放置自転車が溢れ、自転車交通や道路行政もままならず、使い捨て化による耐久消費財としての価値観下落。完成車や部品製造業のみならず、専門化されていた卸小売りの流通業も、大規模小売業による価格破壊とチェーン店の台頭により大変革をきたしていた。

ようやく2010年代に混乱期を脱し、自転車利用の新しい方向性が定まってくるが、本書が刊行された当時は、その将来の見通しがわかりにくい混迷の時代であった。

このような時代背景を基に本書を通読すると、シェアバイクの登場など多少の齟齬はあるものの、著者の提言の正しさが理解でき、自転車史にとってもこの時代が一つの分岐点であったことがわかる。

  「あとがき」に、自転車と同じように自動車やインターネットについても、今は歴史の大きな転換期であると記述されている。

先進国では “脱クルマ社会”が課題であるが、発展途上国においては“目指すはクルマ社会”である。この格差解消が大きな課題であると筆者は言う。

さらに情報化社会への移行により、IT化が人の移動を減らし、ネット販売の普及が物流の増加を促す。一種の移動革命が起きると示唆している。

著者は「この2つの課題を解決する力が自転車にある」として、書名を「サイクルパワー」と名付けたと述べている。

サイクルパワーの先行事例として、最終第6章「世界の潮流は自転車へ━海外自転車事情」に、欧米諸都市の調査レポートが収録されていて今でも参考になる。

  本書は、自転車関連の著作や資料の少ない時代において、先駆的役割を果たした労作である。

1週間前