自転車の本

(ブリヂストンサイクル工業 集英社 1976年刊)

今回紹介する自転車本は、ブリヂストンサイクルが、1976年春需キャンペーン「らんらんセール」の自転車購入客に、景品として付けた小冊子である。

“ハッピーなサイクルライフのための”とサブタイトルがあって、ページをめくると、「実用や遊び用に過ぎなかった自転車が、人間性回復の力として、また健康管理のパ-トナーとして世界中で再認識されている」という冒頭の挨拶文に、自転車の時代背景が窺われる。

  本書は4章構成である。

第1章 バイコロジー

第2章 サイクリング

第3章 自転車実用学

第4章 自転車さ・え・ら(仏語で「あれこれ」の意味)

内容は、バイコロジー運動の提言から始まり、サイクリング案内、自転車実技などの基礎知識がいろいろ記述されている。

また、荻本欣一や桂三枝たち有名人のエッセイや真鍋博のイラスト、また全国サイクリングコースなどが写真とイラストで表現され読みやすい。

体裁は、景品の非売品とはいえ、しっかりしたハードカバー装丁の箱入り小型A6判、全130ページ、カラー印刷である。

全体として、景品としての宣伝臭がなく、あたかもスポーツ車入門書や自転車ミニ百科の趣があるが、これには深刻な当時の事情があった。

  1970年代前半、国内では歴史的な自転車ブームが起こり、73年には史上最大の生産台数を記録していた。

ところが、石油ショックと円高でブームが終焉、この冊子が刊行された1976年には、3年続けて国内需要が減り、アメリカ輸出も急減、メーカーは存亡の危機に立たされていた。

  実を言うと、筆者は当時ブリヂストンサイクルに勤務していたが、ロードバイクなどの新需要喚起の一助とするために企画したのが本書である。

そのときの実費は、10万部発行して1冊250円だった。半世紀後の今日、品薄の古書として1冊1.000円で販売されている。

ついでながら、第4章のなかで“世界最初の自転車”として、1790年フランスのシブラック伯爵の木製2輪車「セレリフェル」を紹介している。今日ではこの説は否定され、1810年ドイツのドライス男爵の「ドライジーネ」が定説となっている。遅まきながら訂正させていただく。

なお、表紙の写真は、らんらんセール告知のテレビCMのセット現場で撮影したもの。中央のペニーファージング(いわゆるだるま車)は、1台30万円で購入したが、今日行方不明になっている。

(コメント:角田安正)

5か月前