
自転車の交通違反摘発が全国的に多発している 。
2020年上半期の摘発件数は13.000件、このままでは19年年間件数の23.000件を上回る勢いである。

19年の違反内容をみると、「信号無視」が55%と過半を占め、「遮断踏切立ち入り」、「一時不停止」、「イヤホン・傘差し・スマホ」などがあり、近年話題になっている「酒酔い運転」も109件あった。
問題は、乗車中の「事故死」427人である。
年々減少しているものの、原因が自転車側の違反によるものが8割近くもある。不謹慎だが、この数は東京都のコロナ死者数400人(20.9.30現在)に匹敵していて、撲滅すべき数字である。
事故死には法令を遵守していれば避けられたものが多いという。自転車に乗る人は「たかが自転車」と軽視せず、「自転車は軽車両」という法令の再認識が必要である。
違反や事故が増大している背景には、コロナ感染が続くなか、通勤や買い物の近距離移動に自転車を使う動きが広がっていることがある。
もともと自転車は多目的に使用できる乗り物である。歴史的には、形状や機能により、移動・運搬などの実用と競技やレジャーなどのスポーツ用に分化してきた。
近年日本ではロードバイクがブームになり、スポーツ用から実用に広がり、若者たちが細身の軽快な車体に乗って、猛烈なスピードで駆け抜ける“街乗り”が増えている。
なかでも、巣ごもり消費とともにウーバーイーツなどの食事宅配便が現れ、バックを背負った配達員が時間に追われて自動車を縫って走る姿も目立っている。

最近では「グラベルバイク」と呼ばれる新しいロードバイクが流行り始めている。
グラベル(gravel)とは砂利の意味であり、MTBから派生してきた未舗装道路も走行できるロードバイクの一ジャンルである。

レースだけでなく、様々な用途に使うことを想定して、荷台や泥よけが追加できるモデルが多い。ロングライドから通勤など日常でも使いやすいロードバイクであり、これから普及していくだろう。
いずれにしろ、スポーツバイクに乗っての軽快なスピード走行は、快適であり格好もよい。だが、法令無視は違反になるだけではなく、少し間違えば大事故につながる。
ウィズコロナ・アフターコロナ時代の自転車は、3密回避だけでなく、運動不足やストレス解消、交通費の節約にもなり、温暖化対策の社会的意義もある。ますます利用者が増えるはずだ。
自転車活用社会では、用途に合わせて自転車を選ぶことも必要である……。