コロナ感染が日本中に拡大するなか、通勤や買い物などの近距離移動に、「3密」を嫌って電車やバスを避ける動きが広がっている。
このような「脱電車」の代替モビリティーの一番手は自転車である。3密回避だけでなく、運動不足やストレス解消、交通費の節約にもなり、温暖化対策の社会的意義もある。
コロナ以降、自転車は個人所有だけでなく駅前のシェア自転車利用も増加、都市交通に大きな役割を担っている。
その自転車に、強敵が現れた。
警視庁は本年(20年)10月から半年間、車道の左端しか走行できない電動キックボードを、自転車専用レーンも走れる実証実験をする。


シェアリング企業3社が、特定地域(東京の一部都区・神奈川藤沢・福岡など)で電動キックボード50~100台を貸し出し、社会的ニーズや安全性を確認するという。
電動キックボードはモーターとバッテリーで走るため、原動機付自転車の扱いである。最高時速は40kmほどで一度の充電で50km走れ、価格は装備により3~4万から10万円前後。折り畳み式もあり、国内では数千台が利用されている。
公道を走るには、バックミラー・ウィンカー・前後ライト・前後ブレーキの保安部品が必要であり、ナンバー登録・自賠責保険加入・運転免許・ヘルメット着用義務がある。
しばしば電動キックボードは“電動キックスケーター”とも呼ばれる。もともとはサドルの有無で区別されていたが、サドル着脱式もつくられ、今では混用されている。

いずれにしろ、小さいながらも自力走行する自動車の仲間である。
実証実験に使う電動キックボードは、上限時速20km、サドルのない立ち乗り式である。
ママチャリ型自転車の平均時速は12~15km、電動アシスト自転車は10~17kmとされるので、スピード感は自転車に近似する。
ただ、電動アシスト自転車は速度によってアシスト力が変わり、時速10kmまでは2倍の力が加わるため、楽な乗車感がある。
またサドルに腰掛けてゆったりと乗れ、長距離走行も電動キックボードより適しているようだ。
電動キックボードは、もともと足蹴り式玩具から発達しただけに、軽くコンパクトで小回りが利く、自転車以上に小型で簡便なモビリティーである。
電動で自走するので、人力走行の自転車より楽に走れることは間違いないが、道路事情と免許制が普及を阻んでいる。安全性にも問題がありそうだ。
自転車と電動キックボードは乗り物のジャンルが違うが、用途や簡便性、価格などでは類似し、なかでもラスト1マイルの都市交通の便利性は甲乙つけがたい。
世界を見れば、電動キックボード全需要の7割が欧米中で利用されていて、350の大都市でシェアリングとして定着、多くがシェア自転車と併用され、将来の期待も大きい。

日本では実証実験の結果待ちだろうが、パーソナルモビリティとしての効用が認められれば、シェアリング事業だけでなくさらなる広がりも期待できる。
電車・バス・自動車・自転車に加えて電動キックボードも、多様化する近距離都市交通手段の一つとして定着するはずだ。
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