自転車に“あおり運転”があるとは、知らない人が多い。しかも7つものあおりがあると聞けば、もっと驚くことだろう……。
このたび政府は道路交通法を改正、本年6月30日から施行した。自動車の危険なあおり運転防止が目的だが、あわせて自転車の危険行為を取り締まる。
これからは自動車など他の車両の通行を妨げる、意図的な自転車のあおり行為を、「妨害運転」として違反者を摘発することになる。
自転車による7つのあおり運転とは━
①逆走して進路をふさぐ
②幅寄せ
③急な進路変更
④不必要な急ブレーキ
⑤ベルを執拗に鳴らす
⑥車間距離の不保持
⑦追い越し禁止違反

確かに逆走は多い。また、街中で渋滞する自動車をきわどくすり抜けるロードバイクの若者をしばしば見かける。本人には悪意がなくても、あおり運転に該当しかねないから要注意である。
道交法では自転車は軽車両と位置づけられている。「一般道路に自転車を追い出した」と不満の声は多いが、欧米に比べ自転車道路の少ない日本の現状では止むを得ない。
ともかく“車道が原則、歩道は例外”と割り切り、車道は左側を走り、歩道では車道寄り徐行を心がけることだろう。
昨年、全国の警察が摘発した危険行為は約2万7千件。そのうち3年以内に2回違反した300人ほどが安全講習を受けたという。
これまで危険行為には、飲酒・信号無視・2人乗り・並走・スマホ・無点灯など14項目が規定されていた。今回の妨害行為を加えて全部で15項目になった。
いずれも善良な自転車ライダーなら常識で適否が判断できる行為である。人と自動車と自転車が共生できる社会を目指したいものである。
━ついでだが、危険走行と言えば戦前の小説家志賀直哉を思い出す。
短編小説「自転車」のなかで、大の自転車好きだった自分の少年時代を回想して、「自転車に乗った人に出会うと、引き返して無言で競争を挑んだ。(原文)」と書いている。
ある日街を走っていると、知らない人が乗る2台の自転車に競争を挑まれた。勝てそうにないので、不意打ちをする。1台の自転車の前を斜めに突っ切って、相手の前輪のリムに自分の後輪のステップを引っ掛け、力一杯ペダルを踏むと、相手の前輪が浮き横転したという。
「暗夜行路」や「城崎にて」を著した大作家とはとても思えない。危険走行どころではない、正にストリートファイトである。
明治後期の自動車も自転車もまだ少ない時代だからできたことだろう……。
