ノー・トラブル・ジャニー
/高知から愛媛に抜ける 

アツシとカンタさん九州四国ぶった切りの旅は、徳島便欠航によりスタートからつまずいた。羽田前泊のあと、2日目早朝徳島入り、その後はトラブルなく四国半分をぶった切り、高知泊まりとなった。3日目は愛媛八幡浜まで走り、船便で大分に渡る予定。フェリー最終便は18時30分発、無事に九州に上陸できるのか?

(バイクは輪行バックに入れ部屋への持ち込み許可を得る)

(四国ぶった切りコース)

初めての高知でプチ観光

早朝5時起床、オッサンたちは前夜の男勝りのはちきん女将による高知流おもてなしで二日酔い気味だ。

シャワーで体を目覚めさせ、6時に出発した。

高知は二人とも初めて訪れる土地。観光名所は巡っておきたいのが旅の心情だ。まず、南下して海に向かって走り始める。

今日の走行距離は160km、昨日の180kmより短い。フェリー最終便には問題なく間に合うはず。安心してプチ観光を楽しむことにした。

(目の前に来てやっと気づく、はりまや橋)

最初ははりまや橋、スマホで地図を見ながら探すも15分ほど同じ場所でグルグル周る、想像以上に小さくて気づかなかった(笑)。

さらに南下し桂浜へ—。

(時代劇のセットを感じさせる、桂浜の風景)

平日の早朝で人がほとんどいない公園で、大きな坂本龍馬像を見つけた。これを横目に数多くの旅行者が海へ向かって、竜馬張りに「○○ぜよ!」と叫んでいるはず(笑)

それにしてもオッサンたちは初めてなのに、何回も来ているかのように感じる。これがデジャブ(既視感)というものか。おそらく幕末時代劇でよく見ていたからであろう。

メカ改造も良いけど、調整方法も覚えてきてよ

—桂浜散策ののち八幡浜へ向かう。

走りやすい海岸線を10kmほど進み、途中から内陸に入る。

なにやらカタンさんが悩んでいるようだ。

「後ろのギヤ、変速の調子がイマイチなの、アツシ、ちょっと見てよ」

アツシもカンタさんも、バイクは同じカーボンのブリヂストンアンカー。カンタさんのアンカーは購入時には10スピードの105モデルを搭載していたはずだ。

アツシも10スピードだが、当時はまだ目新しいシマノ社のデュラエース自動変速Di2を搭載していた。

カンタさんはそれがかなり悔しかったようだ。思い切った改造をしていた。

改造後の姿は、デュラエースとアルテグラのミックスコンポ。自転車の顔であるクランクとブレーキアーチにはデュラエース。変速系はこの年に初めてアルテグラコンポで発売されたDi2で、11スピードにVerアップされていた。

自動変速はコンポ違いでもさほど性能は変わらない、しかも同時に発売されたばかりのシートポスト内臓バッテリーを使い、電気配線であるジャンクション回りがスッキリしている。

—なかなか良い選択だ。

アルテグラ採用により数万円コストを抑えた分で、MAVIC社のディープリム、コスミックカーボンへ変更している。改造前の面影は、フレームとタイヤぐらいしか残っていない。

「変速調整は教えてもらわなかったの?」

「アツシが居れば大丈夫だと思ってさ、これから覚える、ガハハハ」

一人のときにメカトラしたらどうするんだろう?と思いながら、アツシは変速メカの位置設定を調整した。まぁ、割り切って人に任せるのもカンタさんらしいな……。

そば湯?なにそれ 

約70km走り11時ごろ、国道沿いのドライブインへ入店、早めの昼食を摂る。前日の走りで四国の内陸部にはコンビニ等が少ないことがわかっていた。何事も経験である。

(ドライブイン引地橋)

二日酔いの残りでバテ気味の二人は、ざるそばを注文した。店内の涼しさと合わせ、さっぱりしたものは余計においしく感じる。食べ終わったところで、カンタさんがそば湯くださいと声をかけた。

「そば湯?」

不思議そうに聞きかえす女将さん

「そば湯です、そばのゆで汁」

「そがなの聞いたことないよ」

えぇー、そば湯文化ないんか!と、ビックリするオッサンたち。

そばのゆで汁をめんツユに入れて飲む、関東ではよく見る光景だが、この近辺ではゆで汁は捨てているとのこと。改めて日本は広いなぁと思う。

めんツユが美味しい。捨てるのもなんだし、冷水器の冷えた水で割ってみる。

「アツシ、意外とイケるぞ」

「本当だ、おいしいっすね」

「めんツユは、砂糖、塩、だしのアミノ酸だろ。究極のサプリメントだな」

「それならボトルにそば湯と一緒に入れたら最強ですね」

さすがにそれはやりすぎだよと皆で大爆笑。

店内には、アユの塩焼き、セルフおでんもある。ここの土地風情を感じながら出発した……。

(店内にはセルフおでん)

暑さ厳しくペースが落ちる
フェリーに間に合うか?

大渡ダムへの登りが終わり、高知県から愛媛県に入った。

13時を過ぎ、暑さがますます厳しくなってきた。まだ40km近く登りが続くはずだ。勾配はゆるいが疲労が蓄積、自然にペースが落ちていく。

(民家の湧水を借り、水浴び)

2時間後ようやく最高標高地点に着いた。そこから標高差700mを一気に下った。予定より遅れていてフェリーの最終便に間に合うか気がかりだが、まずは安全第一とスピードを控える。

峠が終わり、内子という道の駅で小休止する。乗船予定の18時まではあと約2時間しかない。今のペースだとフェリー乗船はギリギリの時間になる。

(内子の道の駅から八幡浜まで約40km)

ここで不安がよぎった—。

アツシが常に前を走り、カンタさんは2~3車身ほど空けて後ろを走る。。空気抵抗を軽くするため、人の後ろについて走るのは自転車乗りの常識だが、もっと車間を詰めないとこの恩恵は減る。

それでも楽だよとカンタさんは言うが、もっと楽に走れるのになぁと思う。

航していた。

少し速度を上げてみる。だがカンタさんは少しずつ遅れてしまう。速度を落として待つ、合流したら速度を上げる、また遅れる。ペースが上がらないまま時間が経つ。

周りは薄暗くなりはじめ、八幡浜港に到着したのは18時45分ごろ。フェリーは15分前に出

(コマネチポーズの撮影忘れるほど、疲れ切った)

「間に合わなかったか……、とりあえず、明日の時刻表確認してきます」

これから宿の変更かぁ、気を重くしながら乗船ターミナルに向かう。

あれ?何ときっぷ売り場が2か所、時刻表も2種類ある!

「カンタさん!21時過ぎの船がありました!」

「えっ?18時30分が最終便っていってなかった?」

「フェリー会社が2つあって調べたのは片方だけでした、スミマセン」

(観光地定番の顔出し看板)

地魚食べられず残念

大分臼杵港への到着は23時ごろ。大分の地魚を楽しみにしていたが夕食には間に合わない。

乗船までは残り1時間、街に出ることもできない。

やむなく近くの喫茶店風のお店で、カンタさんはカレー、アツシは肉うどんを食す。

「また、うどんか……」

「そういうなよ、俺だって頑張ってきたんだ、このカレーもうまいよ」

「わかってますよ、でも楽しみだったの、大分の関アジ……」

—食事もそこそこにフェリーに乗った。

自転車は輪行バックに入れず、1.000円払ってそのままフェリーにあずける。地魚を逃して半分ふてくされていたアツシだったが、船内にはシャワーがあり、2等席は広く使える快適な船室により気分が晴れてきた。

カンタさんが買ってきた缶ビールで四国ぶった切り完遂を祝う……。

(四国ぶった切り後半の軌跡)

フェリーは2時間ほどで臼杵港に接岸、無事に九州に上陸した。

すぐそばのビジネスホテルにチェックイン。朝早い出発ということで自転車はロビーに置かせてもらう。宿の食堂入り口には、関サバをはじめ地魚のメニューが並んでいた。悔しい……。

気持ちを入れ替え、九州ぶった切りの前祝いにと、こんどはアツシが缶ビールを買いに出た。

部屋に帰ると、疲れ切ったカンタさんは早々に就寝していた。浴衣がはだけ、お尻が出ちゃっている、しかもパンツ履いてないし(笑)

そんな愛嬌ある寝姿に向かってつぶやく……。

お疲れ様カンタさん、明日は熊本で馬刺し食べようね(笑)

3年前