宮田製作所七十年史

(宮田製作所七十年史編纂委員会 宮田製作所刊)

本書は、1959年(昭和34)に創業70周年記念として刊行された、自転車メーカー宮田製作所の社史である。

しかしながら本書には、単なる一企業の社歴にとどまらず、その背景として明治以来の日本自転車工業全体の推移が記述されている。このため、自転車史研究の第1級史料としても貴重な文献である。

そのことは、本書の字句用語について、当時の早稲田実業教頭の校閲により正確を期した、との後記からもうかがわれる。

本書は、第1篇明治時代から始まり、第2篇大正時代、第3篇昭和時代、第4篇捕遣の4篇構成である。

第1篇は、1881年(明治14)鉄砲鍛冶宮田栄助が、「宮田製銃工場」を創業することから始まる。

1902年(明治35)自転車専業として「宮田製作所」に改称、欧米輸入車全盛のなかで、「旭号」ブランドが有名になる。

━これらの記述は、宮田栄助一周忌に2代目栄助が著した「宮田栄助追悼録」に多くが拠っていると思われる。記録がほとんどない今日、当時の状況を知るうえで参考になる。

第2篇大正時代は、1次大戦により日本自転車工業が勃興する。宮田はオートバイから自動車まで手掛けながら、自転車のバテットチューブ国産化などでも技術力をたかめ、自転車トップメーカーの地位を固めていく。関東大震災では大打撃を受ける。

第3篇の2次大戦前には、「ギヤエムの宮田」の名は確立され、輸出も拡大する。その後軍需工場への転換や、満州宮田製作所の設立など曲折を経る。

戦後はオートバイで大手の一角を占め、また消化器への進出など発展を続け、栄光のなかで本書は終わっている。

━その後間もなく経営不振に陥り、松下電器の傘下に入り、さらにモリタなどへと資本が移っていく。社名も「宮田工業」、「ミヤタサイクル」と改称しながら、平成から令和へと最古の自転車企業として歴史を刻んでいく。

自転車工業の盛衰を詳しく知りたい人にとって、本書は研究書としても価値ある社史である。とくに第4篇の捕遣のなかの写真類は貴重な記録である。

なお、「自転車物語Ⅰ・スリーキングダム」「自転車物語Ⅱ・バトルフィールド」(角田安正著/八重洲出版刊)のなかにも、本書に拠ったいくつかの物語が記述されている。

(コメント:角田安正)

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(70年史の表紙題字と発刊当時の本社全景写真)

6か月前