電動キックスケーターとシェアリング

このたび経済産業省は、モーターで自走する「電動キックスケーター」のシェアリングサービス実証実験を許可した。ベンチャー企業が横浜国立大学と九州大学構内で実施する。

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(いろいろな電動キックスケーター。折り畳みタイプもある。写真はメーカーカタログより)

 

電動キックスケーターは、キックスケーターに電動モーターを取り付け自走する乗り物。最高時速は25km前後、電動アシスト自転車の法定最高時速24kmと同程度である。仕様はメーカーにより異なり、価格はおよそ2~15万円ぐらい、いろいろなタイプがある。キックボードとか、キックスクーターとも呼ぶ。

もともとは子供用スケーターが進化したもので、ローラースケートやスケボーと並ぶ若者の遊具となり、1980年代後半から、スクートと呼ぶBMXのような競技にも使われている。

電動化はロスアンゼルス発祥とされ、2年ほど前から欧米の大都市で、シェア自転車と並ぶ小型で簡便な短距離移動手段として、有料シェアリングサービスが始まり、人気を呼んでいる。

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(アメリカのシェア自転車と並ぶ電動キックスケーター)

決まった駐輪場はなく、車体に搭載されたGPS(衛星利用測位システム)により、利用者は登録したアプリで、路上などにある電動キックスケーターを探して開錠、利用後にスマホ決済する。シェア自転車と同じ仕組みである。

日本でも販売されているが、道路交通法上の扱いは、原動機付自転車と同じく原付免許が必要。このため、一般道路はもちろん歩道・路側帯・自転車道も走れない。観光施設で人気の「セグウエイ」と同じである。すでにシンガポールでは歩道走行禁止になっている。

しかし日本では、車体が小さく速度も遅いなどの理由で、規制緩和の要望が多い。

経済産業省は、今回の実証実験を通じて利用状況や安全性のデータを集め、高齢者への普及も想定して、規制見直しの資料にする考えだ。

━アメリカでは、2017年創業のスタートアップ企業「バード」・「ライム」・「スピン」が、3強として早くもユニコーン(10億ドル以上の価値を持つ非上場企業)入りしたとされ、注目を集めている。

そのなかでライムは、世界20カ国・100以上の大都市でサービスを提供、近く日本へも進出するという。

またスピンは、「はるかに大きな需要があり、収益もより多く見込める」と、主力のシェア自転車を電動キックスケーターにシフト替えしている。「ウーバーイーツの宅配員などの利用も増えている」という。

19年5月には、陸上競技の元王者ウサイン・ボルトがパリで事業を立ち上げると発表、話題を呼んでいる。

シェア自転車にとって、まさに強力なライバルの出現である……。

━以下は余談である。

1974年に日本で爆発的なブームを起こした、少年少女用キックスケーター「ローラースルー」。今も語り継がれる伝説の遊具である。

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(月産10万台を記録した「ローラースルーGOGO」価格5.500円)

自動車メーカーホンダの子会社アクトトレーディングが発売するや、わずか2年間で100万台を売る大ヒットになった。さらに年齢を引き上げるために上級機種を開発、どこまで売れるか誰も固唾を飲んだ。

ところが、日本中の話題になるなかで、ローラースルーが絡んだ交通事故が発生した。子供保護のパッシング報道による社会的圧力に潰され、たちまち発売中止に追い込まれた。その後はアメリカに輸出された。

日本生まれの子供のローラースルーが、アメリカで若者のキックボードになり、それが電動キックスケーターに発展した……と想像を逞しくしている。