先日、自転車販売店経営者向けスクールで講師を務めました。そこで聞いた声が、「シニアカーは3カ月で返品される」です。
シニアカーは高齢者向けに作られた3輪または4輪の1人乗り電動車両(バッテリーカー)。日本の道路交通法では車両ではなく歩行者扱いとなるので、車道ではなく歩道を通行する。基本的に、電動式車いすの発展型だ。1964年の東京オリンピックで、外国人が電動車いすを持ち込んだことで、日本でそれが認知されたと言われている。
トップメーカーのスズキは1974年に最初の製品、スズキモーターチェアZ600型を発売。同年、警察庁が「電動車いす」としての取り扱いする見解を示す。2000年をピークに4輪タイプはスズキを筆頭にヤマハやホンダ、トヨタ車体やクボタといったメーカーも市販をした。だが、今やスズキ以外は市場から撤退したそうだ。
「堅調に売れてはいるんですがね……」と、スズキ自販のセールスマンから聞いた。でも、3カ月で返品したがるユーザーも多いのだ。
複数自転車店の証言。「高齢の親同伴で家族が来店して、カラダの動きが不自由になったので運転免許を返納させたいからセニアカー(スズキの製品名)を買いたい」と検討されて成約するが、「返品したいというお申し出が多いのは本当に困りもの」という。
京都の自転車店では、「必ず試乗していただきます。こっちからあっちに進んでターンして戻ってくる。何度かやって大丈夫と判断できたら販売させていただきます」と、対応策を講じている例も。
体力には身体的要素と精神的要素がありますが、子供から運転免許を返上させられた高齢者は、気力が萎えるのではないでしょうか。使わない道具は場所を盗る不用品。40万円はドブに捨てたようなもの。
だから私は思うのです。免許返上はまだカラダが動く60代くらいに前段階として、電動アシスト自転車を購入し、まだ動ける体力維持に励むべきだと。老化は足から。パワーアシストありでもペダリングをすることで足の骨格筋や神経は活性化します。
昔の人は言いました、「転ばぬ先の杖」。
私はこう言います、「転ばぬ前に電動アシスト自転車」。
●電動車いす、シニアカーはどう見分けるか? JIS規格では、操舵をジョイスティックでするのが電動車いす、ハンドルでするのがシニアカー
●文部科学省「体力加齢変化」グラフから分かるように60代から衰えは顕著。運動習慣の乏しいクルマ漬けの高齢者ではシニアカーでも難しいはず