レンタサイクル物語18
中国式シェア自転車“二強物語(最終回)

台風の目は美団点評

いつものように、中小企業経営者が中国通の友人に聞いた。

━「アリババがハローバイクを買収、滴滴出行もブルーゴーゴーを傘下に収め、シェア自転車は新局面を迎えました。では、モバイクを吸収合併した美団点評は?」

「今やプラットフォーマーとして、屈指のIT巨大企業になりました。シェア自転車ではどんな戦略をとるか、期待されています……」

飲食店情報や出前アプリで急成長した、美団の王興(ワン・シン)CEOは「競合に勝つためには、割引クーポンをどんどん付与して新しい利用者を獲得し、利益よりも規模の拡大を優先させることが大事だ。シェアを取ればいずれ利益が出る」という経営哲学の持主である。それを実践して勝ち抜いてきた。

確かに便利だ。スマホで注文と支払いをすれば、30分で食事が届く。利用者は4億人を超えるという。だが、巨額の販促費を投入するため、最終損益は赤字のままだ。

もともと美団は、アリババ資本の「美団」と、テンセント資本の「大衆点評」が合併してできた会社である。合併時に王興がアリババの持株を勝手に売却したため、美団とアリババは戦争状態に突入した。

対抗してアリババは、美団のライバルの共同クーポン「エルミー」を買収して敵前上陸。美団本丸の出前アプリでも、アリババ傘下の「ウーラマ」が激しい値引き合戦を仕掛け、牙城に迫っている。アリババと美団の戦いは、日毎に激しさを増している……。

「今度はシェア自転車の戦いです!」

━友人は言葉を継いだ。

「美団は、滴滴とも戦争になった……」

美団は次の一手として、これまで滴滴の独壇場だった配車サービスに進出した。

利用者が美団アプリを使ってレストランを予約、同時に店に行く自動車の手配やシェア自転車の空車を検索すれば、ワンストップアプリとしての利便性が一段と高まるという狙いである。

市場では、「美団には資金力があるが、配車サービスのノウハウは滴滴に劣る。決して楽な戦いではない」と批評した。シェア自転車でも「モバイク買収はわざわざ赤字を増やす行為」と批判されながら、テンセントの持つモバイク株も併せ買い取ったという。

そんな最中、危惧は的中した。18年決算で、輸送サービス部門の赤字が大きく増加、シェア自転車だけでも巨額の赤字(約750億円)を計上。株価は公開時から30%下落したままであり、さすがの美団も手を打つ必要がでてきた。

「シェア自転車はこれ以上拡大しない。これからは運用効率を高め、プラットフォームを戦略的に活用して、赤字を減らす」と説明。

最初に手をつけたのが、シェア自転車のアジア太平洋拠点(=シンガポール・マレーシア・タイ・インド・オーストラリア)の全面閉鎖。日米欧からも撤収を開始した。もともとインドあたりは高温で多雨、悪路も多く借り手があまりない。こうした国情の違いを分析、海外事業の黒字化は困難と判断したもの。

中国国内でも「LBS(位置情報)プラットフォーム事業部」を新設。デポジットやポイントを引き続いでモバイクアプリを閉鎖、美団アプリに1本化した。利用者の相乗効果を狙う試みである。

また、ブランドも美団1本化を図った。車名を「摩拝単車」から「美団単車」に変更、美団の名を車体に貼付した。知名度の高いモバイクブランドの変更には、反対意見も多かったようだが。

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(消滅する摩耗の英字ロゴ)

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(モバイクと美団併記のドロヨケマーク)

19年に入り赤字は減っているが、「シェア自転車事業は独占状態にならないと、利益を上げることは困難だ」と、語る幹部もいる。黒字化の道は険しい。

━「美団はモバイル決済にも進出、ウイチャットペイのテンセントとの競合も始まりました」

美団は決済サービス会社「Qiandai(銭袋宝)」を買収、決済事業に進出したことから、自社の大株主のテンセントに真っ向から勝負を挑む形となった。

━かくて美団は、アリババ・滴滴・テンセントを敵に回している。だが、イベントや旅行予約などオンライン化する余地はまだ多くある。オールインワン型のサービスへと拡大を続ければ、2強に迫る“スーパーアプリ”になると言われている。

シェア自転車は“1プラス3 ”時代

“新3強”は黒字化できるか?

中国の大都市で、シェア自転車を通勤手段の一部として使う人が、全体の65%を占めるとする調査がある。確かに、シェア自転車には、都市交通手段として一定の需要がある。問題は多々あるが、今では市民権を得たことは間違いない。

しかしこの事業は、自転車とメンテナンスに多額の資金が要り、損耗率も高い。利用料値上げは、公共交通的性格から限度がある。自転車車体やネットでの広告収入を試みてはいるが、多くは期待できない。今では資金調達が困難になり、頼みのデポジットもなくなった。乗れるはずの空車の故障や、乱雑な放置車は苦情の的になる。まさに八方塞がりである。

トップを維持しているofoでさえ経営破綻に直面している。負債の返済もままならず、

CEOの戴威は“信用失墜した人物”として最高人民法院のブラックリストに入れられ、飛行機移動や宿泊、不動産購入など制限されているそうだ。

━ことほど左様に、シェア自転車専業企業は、もはや現状の泥沼を抜けられない。

━これからは、獲得した顧客の満足度を高め、利益を生み出す時期である。“シェア自転車新3強”として、表面に躍り出てきたアリババ・滴滴・美団3社に、再建と発展の期待が集まる。

だが、シェア自転車はこれまでの“O2Oモデル”と異なり、多額の投資を要する事業だけに、ビッグデータを活用しても資金回収は難しい。

そもそも中国ネット企業は、巨大な人口の国内市場を基に飛躍的に拡大してきた。しかし、成長とともに企業間競争が激化、加えて米中貿易戦争のあおりで消費が鈍化。収益性の向上に海外展開が不可欠だが、シェア自転車ではすでにその答えが出た観がある。いずれにしろ、収益化の道のりは遠く、戦略の見直しが必要である。

1プラス3、すなわちofoと新3強のこれからの動向を、世間は注視している……。

3か月前