レンタサイクル物語15
中国式シェア自転車”二強物語(5)”

モバイク買収される

2018年4月、ofoとモバイクの合併話が破談に終わると、その情報をキャッチした中国スタートアップ企業「美団点評」は、素早く動いた。モバイクを丸ごと買収、美団のモビリティ事業に加えて再スタートさせた。

モバイクは、創業以来短期間に累計1.000億円もの借入をおこなっていたため、これ以上の資金調達は困難とみられていたが、この買収により当面の破綻は回避された。

━モバイク身売りにより、創業者の王暁峰(DavisWang)CEOは退任した。

このとき王はこう言った。

「私はモバイクの独立性にこだわったが、中国では1兆1.000億円(100億米ドル)の企業価値がないと独立が維持できない。やむなく買収に応じた」と。

同時にモバイク社内には、王退任の文書が配布され、その功績を讃えた。

「我々は過去2年間で、15カ国200都市にわたり、2億人を超える“モバイカー”にサービスを提供できた。これは王氏のリーダーシップのお陰である」

後任CEOには、モバイク創業時からの共同経営者胡瑋煒(Hu Weiwei)が就任したが、胡もまた18年末に退社する。

胡も語った。

「モバイクは爆発的な成長を経て、スマートで細やかな運営が求められる時代になった。最近ではコストが大幅に削減され、売上も増加、採算は改善している。が、もはや私の使命は終わった……」

創業者2人はモバイク株を売却して、200億円といわれる巨万の富を手中に業界を離れていった。かくてofoとトップ争いを演じたモバイクは消滅した……。

「美団点評」とは

モバイクを買収した「美団点評」(Meituan Dianping)は、口コミグルメサイト「大衆点評」(2003年創業)と、クーポン共同購入サイト「美団」(2010年創業)が合併して、2015年に誕生した中国最大級のITサイト運営企業である。

 

(美団点評ロゴタイプ)

主力の飲食店情報や出前サービスでは、580万店舗情報を掲載、インターネットで店舗への集客をして、中国人の食生活にイノベーションを起こしたとさえ言われている。

美団はさらなる発展のため、人々の生活の基盤となるITプラットフォームを構築して、“顧客を店へ誘導する”ことと“店から顧客へのサービスを届ける”ことを目標に、あらゆるモノやサービスの販売を目指している。

現在の利用ユーザー数4億人(一人当たりの年間利用回数24回)と言われ、フードデリバリーから旅行予約や配車サービスに進出、さらにマンション賃貸からテーマパークの入場券販売なども手掛け、年間取扱高8.5兆円にのぼっている。

18年に香港市場に上場、時価総額4~5兆円規模の巨大新興企業である。これは日本の三菱商事やキャノンクラスに相当する規模である。

モバイク買収の狙い

美団は、モバイクを買収したとき、

「モバイクは1日2億5.000万円、年間950億円の損失が出ている」と発表した。

━例によって、日本人の中小企業経営者が中国通の友人に聞いた。

「モバイクは巨額の負債を抱えている上に、赤字が止まらない会社ですね。買収額は4.000億円と伝えられていますが、それほどの価値があったのでしょうか?」

「この買収に疑問を抱く人は多かったようです。経営内容も問題ですが、シェア自転車のビジネスモデルそのものを否定する声もありました」

しかし、美団のカリスマ経営者王興CEOは買収にあたって言った。

「宝(=モバイクのこと)を拾った」

━友人は続けて説明した。

「当時、美団は香港上場を数か月後に控えていました。だからこの買収は美団の企業価値を上げる目的ではないか、と憶測する人もいましたね」

「またある人は、モバイクの持つユーザーデータの入手が目的ではないかと言いました」

ともあれ、多角化を続けて一代で巨大企業を築いた戦略家王興CEOのM&Aだけに、その手腕に世間の注目が集まっている……。

シェア自転車部門、再建なるか

買収後、美団はモバイク部門の再建を急いでいる。

具体的には、海外市場からの全面撤退、サイクル用品のネット販売の開始、モバイクアプリの美団への一本化、ブランド名もモバイクから「美団単車」に変えた。利用者のテコ入れや経営効率を高め、いわば美団化を進めている。

━美団全体の18年年間収支は

売上高652億元(1兆800億円)

損失 ▲85 〃(1.400 〃)

売上高は前年比92%アップと大幅に増加しているが、損失は前年の6倍に赤字が拡大、4年連続の赤字である。

「19年の市場は成長が鈍化し競争が激化する」との見解を示しながらも、美団全体の売上高は916億元(約1兆6000億円)、140%の増加を見込むという。

━買収したモバイク部門の収支は

売上高15億700万元(約260億円)

損失 ▲45億5.000元(750〃)

モバイク部門はリストラ費用や減損処理があって、売上高を上回る大赤字である。これについて美団幹部は「モバイクの赤字は1回限りの費用」と説明した。

中国通の友人が解説した。

「本体の美団そのものが赤字です。モバイク部門はその赤字に拍車をかけた形になっています。売上高の3倍もの赤字部門が、簡単に黒字化できるとは思えません。まだまだ苦戦が続くのではないでしょうか……」

拡大する赤字をものともせず、シェア争いに資本をつぎ込み、相手を倒すまで前進を続ける、中国スタートアップ企業のエネルギーは凄まじい。

━最新情報によると、美団の19年1~3月期(第1四半期)決算は

売上高191億元(約3.250億円/前年同期比170%増)

損失▲14億元(約220億円/前年同期▲210億元から大幅圧縮)

美団化により、シェア自転車事業の早期黒字転換が実現できるかどうか、いま世間は耳目をそばだてている……。

 

3か月前