2019.05.27 赤松正行
2012年末にクラウドファンディングに成功したEmily BrookeのBlaze Laserlightは、自転車用の前照灯で、一般的な白色LEDライトに加えて、緑色レーザーで自転車のマークを投影する機能を持つ。自転車の前方数メートル先に自転車マークが現れるので、自動車の運転手や歩行者に気づかれ易い、というわけだ。レーザーの特性でシャープな絵柄が描かれる。

筆者も当時、このチャーミングなアイディアに惹かれて購入した。しかし、謳い文句ほど明瞭にマークが描かれるわけではなく、特に走行中であれば路面振動でマークが激しくブレてしまう。多くのアクション・カメラがスタビライズ機能を持ちながらも、振動を抑え切れないのだから、それは無理もない話だ。最先端のテクノロジーではなく、洒落た雰囲気で売り切る製品だろう。
ただし、Emilyは事業家として野心的だったようで、2016年にはレーザー・ライトをロンドンの自転車シェアリング・システムSantander Cyclesの全数にあたる11,500台に装備してしまう。しかも、その費用の9割にあたる£768,000(約1億1千万円)をSantanderに負担させるのだから、恐れ入る。スターウォーズ風のPVにも失笑するだろう。ライセンス料はいくら支払ったのだろうか。
さらに、Blaze社改めBeryl社は2018年に新しいクラウドファンディングを展開する。このLaserlight Coreでも、路面振動でマークがブレるのは相変わらずで、本質的な改良が行われていないのが残念。価格を抑えた普及版であるせいか、レーザーの鮮明さも劣っている。ただ、より軽く、取付や充電が扱いやすくなっている。第1作がゴージャスなら、こちらはカジュアルだ。
当初はジョークじみていたが、継続的な事業展開には見習うことが多い。さらには、ダイナモ発電式のレーザー・ライトを装備した独自の自転車シェアリング・システムを2019年夏に立ち上げるらしい。それもドック・ステーション型のSantander Cyclesに対抗してドックレス型。もはや下剋上と言うか、海老で鯛を釣ると言うか、その起業家精神に感心してしまう。

Beryl Laserlight Core(中)
Beryl Burner Brake(リアライト、下)
【参考】地表をスキャンするフロント・ライト(Critical Cycling)
自転車シェアリング〜ロンドンSantander Cycles編(Critical Cycling)
アクション・カメラのスタビライズ比較
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