レンタサイクル物語14
中国式シェア自転車“二強物語(4)”

限りなき消耗戦続く

2015年北京で始まったシェア自転車は、16~17年にかけて中国大都市に広がり、自転車数2.000~3.000万台、運営会社70~100社、猛烈な勢いで拡大を続けていた。世界はその将来性を、息を呑んで注目していた……。

だが、2年にわたる需要を超えた大量の自転車投入、シェア拡大を狙う泥沼のような値下げ競争など利益なき消耗戦は、確たる収益モデルがなく、競争が競争を生むゲームの様相を呈していた。もはや戦いが経営の限界を超えるのは、時間の問題だった。

早くも17年半ばには、一部の運営会社の撤退が始まった。大手の一角をなしていた「悟空単車」「3Vike」「小鳩単車」などが相次いで経営破綻、その波は業界首位ofoと2位モバイクの二強にも及んでいった……。

「滴滴出行」と「アリババ」登場

18年になるとofoの資金繰りは急速に悪化、利用者のデポジット(当初の利用料99元を199元に引き上げていた)返還請求に即応できなくなる。自転車メーカーへの代金や自転車輸送費など未払い訴訟も表面化、しばしば経営危機や身売り話が伝えられるようになる。

━中国旅行から帰国直後の、日本の中小企業経営者が中国通の友人に聞いた。

「売上が自転車利用料だけでは、資金繰りができないのでは?」

「そうなんです。そのころのofoの1カ月の必要コストは、40億円だったそうです。レンタサイクル事業としては、日本では思いもつかない大変な金額です!湯水のように金を使えば赤字は当然です。だから必要資金は、増資か借入金で賄うしかありません。文字通りの自転車操業でした」

「それにしても、こんな大赤字でよく資金調達ができますね!誰が金を出したのですか?」

━ofoの最大株主は、創業まもない時期から出資していた、配車サービス最大手「滴滴出行」(Ⅾidi Chuxing/デイデイ・チューシン)。滴滴は配車アプリをほぼ独占、利用者5億人、企業価値6兆円といわれる、中国シェア経済をけん引する2012年創業のユニコーン企業である。

(滴滴出行関連書籍表紙)

━またIT関連企業「アリババ」(阿里巴巴/Alibaba)も、2017年末にofo創業メンバーの1人から株式を取得、ofoの大株主に名を連ねていた。アリババはオンラインショップなどを営む1999年ジャック・マー創業の時価総額アジア最大級の巨大企業である。「独身の日」と題する1日だけのセールで、3.5兆円(日本の「楽天」の売上1年分相当)も売ることで、日本でも有名である。

(アリババ関連書籍表紙)

━その結果ofo取締役会は、ofo 5名・滴滴2名・アリババ1名・ファンド1名で構成されていた。経営悪化に陥ったofoの再建に、滴滴とアリババの出方が注目を集めていた……。

独立路線を行くofo

中国通の友人の話は続いた━。

「筆頭株主の滴滴はしばしば経営に口を挟みました。17年秋には、ofoとモバイクの合併を目論みました。その後も滴滴自身がofoを買収する提案や、アリババへ譲渡する話もありました。ofo再建のチャンスは何度もあったのです……」

「それで、どうなりました?」

「なかでもモバイクとの2社合併話を、既定路線のようにみなす人が大勢いました。赤字でも過当競争を勝ち抜いた上位者が合併して、利益を独占する考え方がスータートアップ企業にあったからです」

しかし、独立路線を志向するofoの創業者載威CEOは、取締役会での発言力を生かして、いずれの計画も反対で押し切り、アリババグループなどに資金援助を求めた。これにより950億円もの追加融資を受け、単独経営を続けていく。

━やがて返金問題批判の高まりを受けて、モバイクが保証金不要を打ち出した。ofoも追随せざるを得なくなり、すでに集めていた保証金600億円の返金に加え、一段と資金繰りが苦しくなった。

このため50都市10万台を突破したと豪語した海外事業の縮小を開始、相ついで主要都市から撤退した。アメリカ・シアトルのケースでは、シェア自転車営業許可証の取得料年間2.800万円が払えず、自転車を1台3ドルで売却して撤収したと伝えられている。

そうこうするうちに、滴滴に大問題が起こった。滴滴は中堅シェア自転会社2社を買収、シェア自転車への本格進出を企図していたが、本業の配車事業で殺人事件などの不祥事が連続して発生した。このため自身の経営が危うくなり、ofoどころではなくなった。

━一方アリババは、ofo以外にもシェア自転車への関心を深め、地方都市でシェアを伸ばしている業界3位「ハローバイク」(Hellobike)に360億円を出資して筆頭株主になった。世間では、シェア自転車覇権争いの旗頭になったアリババの姿を見て、ofoもアリババ系とみなしている。

━ofo載威CEOは資金調達に悩まされながらも、

「この1年(18年)は資金繰りに追われるだけだった。だが、シェア自転車に環境破壊がなく交通渋滞を解消する意義がある限り、苦しくても決してあきらめない」と独立経営に執念を燃やしている……。

ライバル・モバイクはどうなった?

(続く)

7か月前