レンタサイクル物語13
中国式シェア自転車“二強物語(3)”

そもそも論①
投資額はどれほどか?

2016~17年にかけて100社にのぼるシェア自転車スタートアップ企業が乱立、大都市には20千万台を超える自転車が投入された。二強のofoは500万台、モバイクは400万台を配置、事業の成長性、将来性、採算に注目が集まるなか、生き残りを賭けた過当競争が展開されていく……。

━そのころ、中国旅行から帰国した友人に質問された。中小企業の会長で第一線を退いたばかりだが、経営者として採算が気になるようだ。

「上海や北京の街中で溢れんばかりのシェア自転車を見て驚きました。わずかここ1~2年のことだそうですね。そもそもこの事業は採算が合うものでしょうか? いくら中国の人口が多いと言っても、過大投資ではありませんか?」

「それが問題になっています。本来は費用があまり要らない事業のはずですが、陣取り合戦のような先行配置競争で規模が過大になりすぎて、投資が巨額になっています。メンテナンス費用なども想定以上に掛かっているのでは……」

━初期投資の内容は

1.自転車購入費(スマートロック付き)
ofoの場合、1台300元として、500万台投入で日本円255億円
モバイクの場合、1台1.000元として、400万台投入で日本円680億円

2.メンテナンス費用
収納場所のない野ざらしであり、また不特定多数の人が乗るために、故障しやすく、部品の盗難などから想定以上の費用発生

3.放置車・故障車・盗難車や再配置車の回収運送費用
乗捨て場所以外からの回収、乱雑に倒れた車体の整頓など想定以上の費用発生

4.広告宣伝費
なかでも競争に勝つための値引きなど過大販売促進費用発生

5.会社運営のための組織や人件費

 

そもそも論②
収益は何から得るのか?

「自転車購入費だけで100億円単位の投資です。見合う収益が期待できますか?」

━主な収益源は

1.自転車1台の利用料

2.利用加入時の前払い保証金(デポジット)の運用益

3.車体などにつける広告収入

4.利用者属性や移動などのビッグデータ活用

「利用料は1回30分0.5~1元と聞きました。日本円なら8.5円~17円ですね。1日5~6回の借り手がいたとして最大6元、日本円で100円程度です。フル回転に近い稼働率なら1年ぐらいで償却できますが、そんなに利用者がいますかね?」

「大都市では利用者数を度外視した大量の先行配置がおこなわれています。故障車や放置車、盗難車も多いと聞くので、現実の稼働率はかなり悪いと思います。採算ラインがわからなくなっているのでは」。

「デポジットは預り金ですね。運用益が期待できますか?」

「金額的には馬鹿になりません。モバイクの場合で、登録者が2800万人・デポジット1人299元で総額80億円、日本円で1.300億円になります。しかし現状では運用どころか資金繰りに使っているようです」

━広告費については、のちにofoの載威CEOがこう語っている。

「もっと、広告費収入に力を入れるべきだった。放置車が溢れた今となっては、イメージダウンを恐れて広告主がいなくなってしまった」と。

「ビッグデータは収益を生むものでしょうか?」

「どの程度の金銭的価値を生むか、まだわからない段階です。でもIT企業が投資するのは、ここに狙いがあるようです」

 

そもそも論③
資金調達はできたか?

「この事業の多くは個人起業家と聞きますが、巨額の資金がそんなに簡単に集まるものですか?」

「中国は14億人もの巨大な市場です。ITとシェア経済を組み合わせた新事業が実現できたら巨大なビジネスになります。ここ十数年の経済成長で資本の蓄積もでき、国民性も投資に積極的ですよ」

「でも赤字会社への過大投資は、日本の伝統的な中小企業では考えにくいのですが」

「中国では、今は赤字でも競争に勝ち残り、株式公開にこぎつければいずれ儲かる、と考える投資家が多くいます」

━2015~17年にかけて、ofoもモバイクもそれぞれ20社前後のファンドなどから1.000億円単位の資金を調達した。業界全体では5.000億円以上の資金が投入されたという。

舞台は暗転、規制始まる

大量の自転車が街中に溢れ様々な問題が発生した━。

放置・廃棄・故障車が続発。街の美観を損なうだけでなく、鍵をこじ開けての盗難・部品取り外し、不法投棄など……。主な利用者であるミレニアル世代特有のわがままな気質もあってか、人々のモラールが問われる状況になった。

なかでも、少年の死亡交通事故が2件発生するなど人身事故が相次ぎ、ofoは878万元(1億5千万円)もの賠償訴訟を起こされた。

また、デポジット返還請求に応じられない業者が現れ、社会問題になる。

━そのような情勢に対応して、2017年半ばから北京や上海などの地方政府が、シェア自転車のルールやガイダンスを相次いで発表した。

1.乗捨て自由を禁止し、指定エリア駐輪を義務付。違反者は罰金。

2.新車投入を禁止か制限。投入後3年間で新車に交換義務付け。

3.デポジット制度禁止。

4.安全のため12歳以下の子供の使用禁止。事故に備え利用者の保険加入義務付け。

5.鍵(スマートロック)の機能強化。

━17年の終わりごろ、モバイクの王CEOが経済記者から質問された。

「この事業は利益があまりないと聞くが、さらにモバイクの自転車は他社よりコスト高。それでも利益が出るか?」

王はこう答えたという。

「もし利益が出るなら投資家を探す必要はない。創業の段階で利益の話は早すぎる。とにかく誰かが投資してくれて、自分が生き残るチャンスが欲しい。利益を上げる方法は投資家と一緒に考える」と……。

(続く)

 

 

 

4か月前