━ある事業部の挑戦
(藤子不二雄Ⓐ著 中央公論社)
本書は今や古典ともいえる漫画の自転車本(初版1989年)である。著者は一世を風靡した漫画家藤子不二雄A。松下電器(現・パナソニック)を舞台に、1人のサラリーマンが新プロジェクトに挑む姿を、すべて実名で描いた成功物語である。
自転車産業のターニングポイントとなった1980年代後半の大混乱期を背景に、その打開に苦闘する当時の自転車企業の熱気が、劇画と異なる趣の著者独特のタッチにより、画面から溢れんばかりに描かれている。
物語は自転車業務経験のない主人公が、他部門から自転車事業部部長に抜擢されて転属、輸出減少と低価格輸入車急増よる市場混乱に直面、戸惑うことから始まる。
そして高価格政策を取るために、当時はまだ少なかったスポーツ車に着目、輸出ブランド「パナソニック」を活用する新戦略を立案する。
そのセールスポイントとして、「あなただけの1台」をキャッチに、まだ普及初期だったパソコンを使うオーダーシステム「POS」を打ち出す。これは高額商品の見込み生産リスクを避ける戦略でもあった。
ストーリー後半には、主人公がオーダー方式実現のために、周囲の反対や抵抗を説得しながら月間販売1.000台を達成するプロセスが詳述されている。
本書は大人向けの「中央公論マンガ愛蔵版シリーズ」に収められている企業漫画であり、今日でも通用する当時のマーケティング戦略がわかりやすくまとめられている。
目で見て楽しみながら役に立つ本として薦めたい1冊である。
カテゴリー: 1冊の本
タグ: 1冊の本