2019.04.18 赤松正行
IAMASという自転車学校がある。正確には自転車も研究できる小さな学校だ。正式名称は情報科学芸術大学院大学。その名の通り情報と科学と芸術が交差するところに自転車がある。ただ、自転車と言っても、その技術や活用が学べるわけではない。大学院なので教育を受けるのではなく、自ら研究することが求められているわけだ。筆者はそこで教員をしている。
一般には卒業式のことだが、つい一ヶ月ほど前に行われた昨年度の修了式では、学生の代表が上半身に自転車の車輪を取り付けて証書を受け取った。その車輪は軽やかに回転するだけでなく、快い音を奏でるとともに、晴れやかで厳粛な式典にふさわしい雰囲気を醸し出す。それはIAMASが自転車学校であることを強く印象付けたと言える。
もちろん、その彼の修士研究は自転車に関しており、最終作品に至るまで数台の自転車を設計・制作している。これが自転車?と疑問に思われた方は正しい。どこにでもあるような自転車を、誰もがするように乗るのでは、何ら独創性も新規性もないからだ。自転車に取り組むからには、自転車を出発点として、どこまで遠く感性と思考を解き放つかが問われている。
もっとも、IAMASで自転車の研究が始まったのは、僅か3年ほど前のことであり、日が浅いこともあって認知が十分とは言えない。そこでここからが本題。ユニークな自転車を志向する人には、IAMASでの研究をお勧めしたい。そのための進学相談会が近く東京と名古屋で行われる。興味を持たれた方に参加していただければ、とても嬉しい。よろしくお願いします。
IAMAS進学相談会(東京)
日時:2019年5月12日(日)
会場:NATULUCK日本橋 会議室
IAMAS進学相談会(名古屋)
日時:2019年5月26日(日)
会場:ベースキャンプ名古屋 メインスペース
【参考】IAMASパンフレット
Human-Framed Cycle~新しい身体感覚を得るための自転車(Critical Cycling)
自転車のようなものを作ること(Critical Cycling)
【補足】IAMASを受験するのであれば、気になるのが過去の入試問題。その入試問題にも自転車が題材として登場しているので、引用しておこう。「理工系の理論的思考能力を試す問題」となっているが、文系や芸術系であっても理論性をもって回答できるし、狭い意味での自転車に囚われずに発想できるようになっている。試しに考えてみて欲しい。
2017年度第2回入試問題
あなたは自転車を活用した新規ビジネス創出に今後3年間で挑戦しようとしているスタートアップ企業のCTO(最高技術責任者)とします。
まず、自分たちが取り組む社会的な課題を設定しなさい。次に、その課題に対して製品やサービスを提案し、それに用いるテクノロジーをその用法も含めて詳細に述べなさい。最後に、その提案の影響として期待する変化について述べなさい。
2019年度第2回入試問題
観光地などに見られる従来のショップ型自転車レンタルは、2000年代後半のパリのVélib’に代表されるステーション型の自転車シェアリングや、2010年代後半の中国のmobikeなどのドックレス型自転車シェアリングへと発展している。
これら3つの共有システムを比較して、社会生活や情報技術の観点から分析しなさい。次に、歴史的推移を踏まえて予想される今後の状況を推測し、あなたが興味を持つ分野での共有システムの展望と可能性を自由に発想して述べなさい。
参考
・ショップ型自転車レンタルは、利用者が店舗に赴いて自転車を借りるシステム。利用時には返却時刻を指定し、それに応じた料金を先に支払う。身分証明書の提示を求められることが多い。利用が終われば元の店舗に戻って自転車を返却する。半日から数日の利用が想定されている。
・ステーション型自転車シェアリングは、利用者が街角のステーション(貸出設備)に赴いて自転車を借りるシステム。ステーションは多数設置され、どのステーションに自転車を返却しても構わない。ステーションに併設された端末や個人のスマートフォンを用いて利用する。短時間の利用が想定されている。
・ドックレス型自転車シェアリングは、利用者がスマートフォンで近くにある自転車を探して借りるシステム。ドック(自転車繋留設備)は用いられないので、公共の場所であればどこに自転車を置いて返却しても構わない。短時間の利用が想定されている。