レンタサイクル物語12
中国式シエア自転車“二強物語(2)”

 

モバイク起業

2016年載威率いるofoは、大学構内シェア自転車で成功すると、余勢を駆って市中へ進撃を開始した。

━同じころ、上海市内で2人の若者が出会った。王暁峰(DavisWang)と胡瑋煒女史(Hu Weiwei)である。

王が自己紹介した。

「私は配車サービス・ウーバー上海の総経理をやっています。厦門大学を出てから、アメリカのP&Gやグーグルなどの外資系企業に勤めました。この経験を生かして何か新しいビジネスを始めたいと思っています」

胡もそれに応じた。

「私は浙江大学を卒業しました。すぐ新聞記者になり自動車業界を担当しました。この世界は自動運転やライドシェアなどで大きく変化しています。大変興味が湧いたので自動車情報サイトを立ち上げました。やはり新しい事業をしたいと思っています」

王が聞いた。

「胡さんはバーリンホウですね。私はチーリンホウですが」

チーリンホウ(70后)とは1970年代生まれの人を指す。コツコツ努力し、実用を重んじ、家族と健康を重視し安定的な生活を好む年代である。

バーリンホウ(80后)とは1980年代生まれのこと。一人っ子政策の影響で高学歴であり、わがままな性格から「小皇帝」などと揶揄されるが、友達を大切にしトレンドに敏感である。市場経済とともに育ったネットビジネスの申し子のような世代である。

これに数人の若者が加わった。学生時代から自動車販売サイトなどを起業していた李賦と元フォードの夏一平である。

「ネットビジネスとシェアリングエコノミーを融合したビジネスが何かないか?」

「そうだ!シェア自転車がよい。鍵の開閉をスマホでやって、ネットで清算する。このシステムだけ開発すれば後は簡単だ。」

皆で話し合い、会社名を「モバイク(Mobike/摩拝単車)」とし、共同設立者兼CEOに王と胡を選んだ。

(写真:赤松正行)

専用車を開発

仲間の一人が言った。

「既存の自転車はすぐ壊れる。もっと耐久性を向上させ、メンテナンスに手の掛からないように改良しよう。4年間は持たせたいね」

技術を集めて差別感のあるシェア専用仕様車を開発した。これはofoが市販改造車で間に合わせ、カラーリングで特色を出したことに比べ優れていた。

モバイク最大の特徴は、自転車の所在がわかるGPS機能と、QRコードをスキャンして後輪ハブにある小型発電機の電力で自動開錠できる電子錠「GPSスマートロック」であり、代金決済は自動精算できた。この点ではofoを引き離していた。

自転車本体にも多くの開発部品を装着、独創性豊かであり、このため既存の自転車メーカーだけでなく専用自社工場を建設した。

主仕様は、V字型アルミフレーム・ホイールは金属スポークを使わない樹脂・空気を入れないノーパンクタイヤ・チェーンを使わないシャフトドライブ・振動に強いフロントサスペンション・利きがよく耐久力のあるサーボブレーキ・樹脂製スタンドも開発した。前かごと泥除け無し。

「これからシェア自転車もいろんな業者が進出してくるに違いない。仕様だけでなく独創的なデザインにしよう」

メタリックシルバーの車体にオレンジのリム、ハンドルやシートなどにブラック部品を点在させ、一目でモバイクとわかる工夫を凝らした。

━しかし問題が多かった。耐久性重視のため重量が22kgと重く、V字型フレームはバランスが取りにくく乗りにくい。前かご無しは不便であり、サドルには上下の調整機能が無かった。差別化を図るための、シャフトドライブのような実戦性の乏しい機能はあまり評価されなかった。

より大きな問題は高コストで、1台2.300元(約4万円)と言われ、多額の初期投資を必要とした。このため大きく仕様を変更、より軽量の改良モデルを開発した。

電力供給のためのソーラー機能・乗りやすいU型フレーム・一般的なチェーンドライブ・アルミ製スタンド・前かご装着、重量は17キロと普通の自転車に近くなっている。他の自転車メーカーへのOEMも開始、コストは1.000元(17.000円)と下がったが、それでも競合相手の数百元とくらべれば高かった。

ofoとモバイク戦闘開始

モバイクに比べofoのスマートロックも手動ダイアルナンバーセット式(のちにモバイクと同様になる)であり、決済方式も手動清算(のちに自動精算)と簡易であった。このため既存の自転車メーカーへのOEMが容易であり、コストも安く300~400元(約5.100~6.800円)程度であり、調達もスピーディーだった。

2016年~17年にかけてシェア自転車市場に70社~100社を超える運営業者が相次いで参入した。中国国内の40~50の大都市には、総台数2千万台を超えるボリュームの自転車の大量配置がおこなわれ、空前のブームになった。大都市では100万台単位で投入された黄色のofo、オレンジのモバイクなど色とりどりの自転車で溢れかえった。

首位のofoは500万台、モバイクは400万台。ofoのシェアは一時期65%といわれて首位を独走、追随するモバイクを引き離していた。

ofoの戴は17年夏のダボス会議に最年少出席者として参加、まさにシェア自転車の絶頂期であった。

(続く

8か月前