レンタサイクル物語10 中国式シエア自転車 “挫折への道”

角田安正

 

中国のシェア自転車は、配置2千5百万台、利用者2憶人を超える空前の規模で急拡大した━。

だが、中国式の乗捨て自由・スマホ決済の利便性には、とてつもない副作用があった。投棄・盗難・修理・回収・保証金・事故など様々な問題が発生。都市景観からも一企業の枠を超え社会問題化した。

もともとレンタサイクルビジネスを、利用料だけで成立させることは困難である。自転車の行動範囲は狭い。自転車購入費・駐輪場費・回収運搬費・修理費・宣伝費・人件費などの諸費用をカバーできる適正配置台数には自ずと限りがある。だからこそパリのヴェリブは、スタート時から広告費収入をあてにしたわけだ。

 

確かに乗捨て自由は便利だ。わざわざ駐輪場に行く必要はないし、目的地に着いたら放置すればよい。だがこの利便性は、空車が街中どこにでもあることが条件であり、配置台数の多さが決め手になる。

これが「焼銭競争」と呼ばれる利益を度外視した過大な自転車先行配置につながった。いきなりの消耗戦だった。

 

自転車購入費は巨額になる━。

 

1台ごとにGPSスマートロックを装備し、ブレーキ・ノーパンクタイヤ・樹脂ホイールなど耐久性のある部品も必要となり、単一車種の大量生産といえども一般車種より割高になる。安くても1台6.000~7.000円程度と推計され、モバイクのような独自開発車ならコストダウンしても1.5~2万円になるだろう。しかも乱暴に扱われ、野ざらしにされて耐用年数が短くなり、修理費が膨大になる。

 

また乗捨て自由による気まま勝手な放置車は、回収して適正な場所への再配置や、きちんと整列し直す必要があり、おびただしい故障・廃棄車の回収もあり、運搬費・人件費が増大する。

 

さらに厄介なのは、鍵をこじ開けての盗難車、外せる部品の盗難、景観を害する不法投棄が頻発。交通事故の補償問題まで含めると、まさに問題は山積した。

 

1都市に数千~数万台単位の先行配置をすれば投資と経費は膨大だ。いくら人口の多い中国といえども、たかが30分16円の料金で賄うことは不可能と言ってもいい。

加えて半額や無料キャンペーンの値下げ競争をすれば採算は悪化するばかりだ。ニューヨークでは30分300円だから、過大に安いのは一目瞭然である。

 

それでも先行投資は止められない。中国の新興ビジネスには、「どんなに激しい過当競争を繰り広げようと、生き残った者が利益を独占する」という考えがあるようだ。勢い、信じがたい体力勝負になる。

 

━かくて事業者の資金繰りは急速に悪化。自転車メーカーへの代金未払いが始まり、利用者の保証金返還請求が発生。するとたちまち倒産に追い込まれる。中には保証金目当ての起業とさえ疑われるケースもある。

Ofo・モバイク2強でさえ、数百億円単位の追加融資で息を継いでいるが、先の見通しは不透明である……。

 

シンガポールの例では、やはり中国式のオーバイクが、17年売上高7千万円・赤字34千万円・債務超過88千万円になり、開業1年余りでそうそうに撤退したと聞く。

 

━中国式シェア自転車はどこへ行く?

(写真:赤松正行)

6か月前

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