レンタサイクル物語9 中国式シエア自転車“栄光の時代”

角田安正

2015年から中国大都市で爆発的に広がったシェア自転車は、16年には2千万台を超え、5千万台到達は時間の問題と話題になった。だが、ここがピークだった。17年が過ぎるころバブルが破裂、19年の今日では破綻の淵に立っている。空地には放置車・廃棄車が山積みされ、「自転車の墓場」と化している……。

 

━果たして「中国の新四大発明」とまでいわれたシェア自転車は、このまま廃れるのか?それとも新しい時代の始まりか?

 

先ずは、“栄光の時代”を振り返る━。

 

ブームの背景には、自転車を都市の近距離移動手段として見直す世界的気運があり、パリ・ロンドン・台湾などでのレンタサイクル事業の先行事例があった。空気汚染に悩む中国政府も自転車利用を後押しした。またシェア経済としても、ライドシェアや民泊と並ぶ大きなビジネスチャンスとされた。

 

折から中国では、インターネットが急速に普及しスマホ決済が一般的になってきた。ここに着目、スマホを使いGPSを利用して乗捨て自由にする利便性と、QRコードを使う代金決済の簡便性を合わせ持つ、新レンタサイクルシステムを開発した。これは利用者にとって極めて便利であり、事業者にとっても無人化により、駐輪場設置コストや人件費が大きく削減できるメリットがあった。

 

加えて、利用加入時にまとまった保証金収入があり(一人日本円3.200~4.800円)、これを先行費用に充当すれば中小事業者の参入も可能であった。利用者にとっても、保証金前払いでも料金が安く(30分日本円16円・1か月乗り放題320円)、いわゆる「ラストワンマイル」の使用にはコストパーフォマンスが良かった。

 

中国の自転車生産事情もこれを支えた。中国は年間8千万台も生産する世界一の自転車国である。シェア自転車に使われたミニサイクル系車種は大量生産ができ、コストも安く、メーカー自身の参入も可能だった。シェア自転車は、自動車の普及により低迷していた国内自転車需要の救世主でもあった。

 

また、中国は巨大な人口を擁し、巨額の資本調達が可能であり、有望ビジネスの起業が毎日1万数千社にも及ぶスタートアップ大国だったこともブームを助長した。

 

このブームは、新しい起業と10万人ともいわれる雇用を創出した。自転車製造業はいうまでもないが、部品(=スマート機器)製造業・運営企業プラットフォーム・物流配送業・メンテナンス業(=駐輪整備・修理)のスタッフなどである。

 

環境にも寄与した。外出時の交通手段として、自動車・バス地下鉄が減り、自転車の利用が倍になった例もある。かつて1990年代半ばには、北京の人口100人当たり72人という自転車通勤王国だったころとは比べもつかないが、シェア自転車が交通渋滞や空気汚染を和らげたことは間違いない。

 

積極的に海外にも進出した。Ofoとモバイクは世界200都市への目標を掲げ、欧米日シンガポールのような自転車先進国はもちろん、未知のメキシコ・中南米まで計画した。

「シェア自転車で世界の環境改善を実現する」とofoは豪語した。

 

だが、栄光の時代はあまりにも短かった。あちこちで撤退が始まった……。

3か月前