目的地へのコンパスとしての自転車ナビ

2019.02.09 赤松正行

見知らぬ場所に赴く時、カーナビやスマートフォンのナビを利用する。この手のナビは要所ごとに右に曲がれ、左に曲がれ、と指示を出すターン・バイ・ターン方式だ。これは命令されるがままに動くゾンビ状態とも言える。一方、単純極まりないが創造的なナビゲーションにコンパス方式がある。通常のコンパスは北(磁北)を指すのに対して、コンパス・ナビは目的地を指し示す。

このコンパスに従うとしても、その方向に道があるとは限らない。そこで、適切な道を探さなければならない。また、目的地までの直線距離が示されるので、その数値が小さくなるように進路を工夫する。結果的に回り道になるかもしれないし、時には混乱することもある。だが、それこそが醍醐味だ。周囲を見回して考え、思いがけない道や場所に出くわすのは、この上もなく楽しい。

このようなコンパス・ナビはスマートフォンのアプリとして何種類もある。例えば、iOS用の無料アプリ、Waaaaay!(うぇーい!)。脱力系のネーミングながら、機能はしっかりしている。地図上で目的地をタップするか、検索ボックスに目的地を入力する。次いで「ここに行く」ボタンをタップすれば、コンパスが現れる。あとは、スマートフォンをハンドルに取り付けて出発するだけだ。

コンパス方式の専用デバイスも発売されている。小さな円盤状のHaize(£69.99≒約10,000円)は、円周上の十数個のLEDが方向を示し、中央のLEDの色と点滅が距離を示す。シンプルでミニマムな表示が美しく、軽量で小気味良い。目的地の設定は専用のスマートフォン・アプリで行う。開発元はターン・バイ・ターンにも対応予定としているが、一向に登場しないのが可笑しい。

さらにGarminのEdgeなどサイクル・コンピュータ用のアプリもある。例えば、WaypointFieldは、任意のデータ・フィールドに埋め込める。目的地を緯度経度で指定する手抜き仕様だが、無料アプリなので文句は言いにくい。これはむしろ本家Garminがサポートすべきだろう。実装は簡単だから、ナビ黎明期にもあった古くて新しい機能。あらゆるナビが備えて欲しい。

移動効率を求めるなら、自動車を運転するかタクシーに乗れば良い。遠からず自動運転も一般化するだろう。この時、最適経路をターン・バイ・ターンで辿ることになる。だが、自らの意思でペダルを漕いでハンドルを切る自転車なら、ゾンビ状態のナビは如何にも窮屈だ。方向と距離だけを頼りに探検するコンパス・ナビは、感覚と思考を刺激し、偶然の発見をもたらしてくれる。お試しあれ。

【参考】自転車ナビゲーションの最小解HAIZE(Critical Cycling)

6か月前