名著・新刊・大作・希少本を紹介する「1冊の本」 はじめての女性代議士たち ━新しき明日の来るを信ず━ (岩尾光代著 新風舎文庫)

「日本敗戦から8カ月後の1946年の総選挙、日本の女性たちははじめて政治に参加した。チャレンジした女性は全国で80人以上、誕生した女性議員は39人、当時の世界最高の数だった。それにしても、あんなに輝いていた女性議員たちはどこに行ってしまったのだろう……」(「はじめに」より抜粋)

 

著者岩尾光代(いわおみつよ)は文部省を経て毎日新聞で出版に携わったジャーナリスト。記録に乏しい女性議員39人のその後を追う。

 

━大半の議員は次の選挙で落選、政治家として生き抜いた人は少ない。

 

全国2位で当選、その後も衆参5回当選した社会党の代表格藤原(山崎)道子。

同じく社会党で6回当選の加藤シズエ。

のちに青年代議士園田直との不倫騒動で「白亜の恋」として話題になった飢餓防衛同盟の松谷(園田)天光光てんこうこう。

蔵相泉山三六との「国会キス事件」で世間を騒がせた自民党7回当選の山下春江……たちである。

 

━なかでもひと際輝くのは、最年少議員の一人としてさっそうと登場した社会党の山口シズエである。

 

「弟は戦死、空襲で丸裸、戦争はもういや」と訴え、若さと美貌で「下町の太陽」と呼ばれ、たちまちスター政治家になる。

シズエは言う「あの選挙は、民主主義の祭りでした」と。

 

シズエの父山口重彦は、当時の自転車のトップメーカー「山口自転車」の経営者。重彦も政治に興味を持ち、自身が社会党参議院議員(2期)になり、親娘政治家として有名になる。

 

重彦は選挙に事業で稼いだ金を政治につぎ込み、山口自転車倒産の原因にもなる。

シズエは当落を繰り返し、自民党に鞍替えして話題を呼んだ。

 

━本作は著者の雑誌編集経験を生かした、わかりやすく歯切れのよい文章で綴られている。資料に乏しい山口自転車の歴史に政治的側面から触れた読み物としても興味深い。

(コメント:角田 安正)

9か月前