1970~80年頃から、それらの技術は掘り下げられ、より精緻なものに進歩した。だが、開発の多くは素材(カーボンなど)・用途(MTBなど)・デザインに向けられてきた。
世の中に「自転車が進化して自動車になった」と思いこんでいる人は多い。それは間違い。自動車は馬車が発達したもので自転車より先に存在していた。「遅れて生まれた自転車の技術が自動車の発達に寄与した」のだ。
その後自動車技術は独自で発展、特に近年はITと結びつき目覚ましい。
燃料自動車・電気自動車・自動運転車。グーグルやアップルなどIT大手も参入。自動車メーカーは保有する運転に関する膨大なデータを生かして、人工知能(AI)による新しいサービス(例えば、無人移動コンビニ)の創出を狙う。
最近話題になったホンダとGM、トヨタとソフトバンクの提携など関連企業の合従連衡が激しさを増している。
では、自転車では━。
自転車は人力で動かすもの。他の動力を使えば、たちまち自転車ではなくなる。
だから開発は電池技術や車輪回転エネルギー活用など範囲が限られる。思えば電動アシストは自転車史に残る発明だった。
それでもシェア自転車に使われる施錠・開錠システムは、ITの賜物である。
━ほかにも、面白い開発プロジェクトがある。
芝浦工大が自転車の転倒防止技術を開発。車体がふらつくのは、主に走り始めや低速時。そこでセンサーが車体の傾きを検知すると元に戻して直立させる。子供同乗器付きの女性車や高齢者向きであり、高齢化社会に実用化が期待される。
別の話題もある━。
首都圏スーパーのオリンピックが「電池不要のアシスト用自転車ギア」を発売した。クランクギアに搭載したシリコーンが踏力を推進力に変え、踏み出しが軽く、長距離・坂道に強いという。
「フリーパワー」と名付けられたこの新商品は、80年代に開発された人間工学理論による「オーバル(楕円)ギア」を彷彿させる。
本年6月フリーパワーがテレビで紹介されると、とたんに株価が急伸した。残念ながら、かつて6~7社もあった日本の完成車上場会社はすべてなくなり、技術提携したくも相手がいない。
株価を動かすほどに、世間は自転車の技術開発が珍しいのだろうか……。
「フリーパワー」(広報資料より)