レンタサイクル物語6 激変するレンタサイクル事情

角田安正

いまや「シェアサイクル」と呼び名が変わったかの観のあるレンタサイクルは、大きな転換期を迎えている。

07年、パリから始まった新都市交通手段としてのレンタサイクルは、世界の大都市に広がった。駅からオフィスや学校までの「ラストワンマイル」の移動利便性が認識されたからである。

15年、中国ネット系企業がIT技術による新管理方式を開発、世界最大の自転車生産国である中国の利点を生かして本格的な事業化を開始した。

中国車が得意とするミニサイクルにGPSを搭載、スマホで街中の空車を探し、返却も乗り捨て自由という仕組みである。拠点(ポート)不要のため、事業化が容易だった。

創業した「ofo(オフォ)」や「モバイク」に続き、70社を超える業者が乱立、街中には数千万台もの放置車と見まがう自転車が溢れ、早くも社会問題化している。

加えて、過当競争によって経営が悪化、保証金の返還トラブルもあって倒産が相次ぎ、大手のモバイクさえも別のネット企業に買収されるなど寡占化が進んでいる。

この中国方式は世界に広がり、シェアリングブームもあって、レンタサイクル事情は劇的に変化している。

日本では乗捨て自由ではないが、シェアサイクルとも呼ばれ、通勤などの移動用として東京など大都市から始まった。

経営する企業は、自治体の委託の多い「ドコモ・バイクシェア」が最大手、ソフトバンクなどのベンチャー系、ofoやモバイクの中国系、コンビニ・メルカリ・ダイワハウスの新規参入組など百花りょう乱である。

推定だが、1拠点営業の従来型を合わせれば、全国200都市で1.000を超える拠点、数十万台ものレンタサイクルが稼働している。

もともと自転車には、実用とレジャー用の2面性があり、レンタサイクルでも同じである。

都市部で始まったミニサイクル系シェアサイクルは、実用から都市観光の足としてのレジャー用、いわゆる「サイクルツーリズム」(自転車観光)へと展開されている。

京都・大津・福岡・広島など多くの都市で、町おこしやインバウンド需要と相まって、観光巡りの需要が増大している。

東京都では、都内10区共通事業として、ドコモと提携して「コミュニティサイクル」と名付け、駅前・公園・コンビニ・各種店舗およそ300拠点に6.000台を配車している。

この中で渋谷区は、「コミュニティサイクルでサイクリングに出かけよう!」と呼び掛けている。22インチミニサイクルでサイクリングとはいささか苦しいが、レジャー用需要を広める努力をしている。

(注)マップは「渋谷区ニュース」から転載

レジャー用でも、より本格サイクリングに近い用途も生まれている。自転車本体もロードバイクやMTB系になり、景観を眺めながらライドを楽しむ新しい需要である。

中四国を跨ぐしまなみ海道や北海道の長距離コースが代表例であり、Eバイクの登場が長距離走行を可能にしている。

これからもレンタサイクルは、実用に、レジャー用に大きく伸び続けるだろう。その中から、環境にやさしい自転車活用社会が生まれる。

5年前